2014年12月29日月曜日

結婚とはなにか?『ゴーン・ガール』



ゴーン・ガール(字幕)

原題:Gone Girl
2014/アメリカ/149分
監督:デヴィッド・フィンチャー
製作:リース・ウィザースプーブルーナ・パパンドレアレスリー・ディクソン
脚本:ギリアン・フリン
出演:ベン・アフレック、ロザムンド・パイク、タイラー・ペリー 他

ストーリー:ニック(ベン・アフレック)とエイミー(ロザムンド・パイク)は誰もがうらやむ夫婦のはずだったが、結婚5周年の記念日に突然エイミーが行方をくらましてしまう。警察に嫌疑を掛けられ、日々続報を流すため取材を続けるメディアによって、ニックが話す幸せに満ちあふれた結婚生活にほころびが生じていく。うそをつき理解不能な行動を続けるニックに、次第に世間はエイミー殺害疑惑の目を向け……


ネタバレ、大いにあります

今年は忙しすぎた一年だったのでフィンチャーの新作が公開されるなど公開半月前まで全く知る由もありませんでした。劇場で予告編を見たときは「ベン・アフレックの監督最新作か?」とぼーっと考えていると、最後に「監督デヴィッド・フィンチャー」の文字。なにやらベン・アフレックがめんどくさい事件に巻き込まれてあの絶妙に気の抜けた顔を披露してくれるのかーなんて思っていました。
公開直後、ツイッターのタイムラインが凄いことに。「ゴーン・ガールやばすぎる・・・」、「年の瀬にすごいのきた」、「ネタバレになるから何も言えないが、超傑作」などと祭り状態になったんです。もともと観に行く予定でしたが、そこまで映画ファンを唸らせるんだったら早いとこ行かないと、と思い御馴染み109シネマズ湘南にて二回観てきました。

地獄でした。

まず、僕は「結婚」というものにもの凄く嫌悪感を感じる人間なんです。そこが根底にあるというのを前提に感想を書きますね。
なぜ嫌悪感を感じるかと言うと、僕自身この記事を更新している段階では24歳なんですが、人生単位で考えている問題なので明確な答えが出せていません。低い語彙力も手伝っていますが、しっくり来る理由が未だ浮かんでこないんです。

好きな人が結婚生活を通して良くも悪くも変わっていくから?
自分一人の時間がなくなるから?
苦手な子供を持つという問題が浮上するから?
今にも増して背負うものが増えるから?

これら だって相手次第ですし自分次第でもありますし、ある意味その理由にもなり得るものでもあると思います。僕の両親は不仲というよりは寧ろ仲がいい方です。会社の上司の夫婦仲の話を聞くとあまり良くはないようです。今まで生きてきていつからこういう価値観になったのかは覚えていませんが、一つの答え・・・まではいきませんが答えに擦った瞬間みたいなものがございまして。それは『先生を流産させる会』の中でこういう台詞があります。
「OOって、結婚したんでしょ?・・・気持ち悪くない?」
いずれ通るかもしれない「結婚」というものに対する畏怖の念というか、それこそ嫌悪感が溢れた瞬間の台詞。女子中学生がこの台詞を吐くんですが、これを聞いたときもの凄く共感できたんですね。
この感覚に通ずるものがあるか考えました。僕が小学校低学年のあるとき、授業中の6年生の教室の前を通りました。窓から教室内を見たとき「なんて難しい授業なんだ。そもそも黒板に何が書かれているのか理解できない。6年生になったらこんな授業を受けないといけないのか・・・」と軽く絶望したことがありました。でもコレって当然の感覚だと思うんですね。そのときある筈のない知識が目の前にあるということはそりゃ恐いですよ。当たり前ですが、普通に進学していけば自ずと分かる内容になっているんですよね。僕はまだ低学年で結婚している人たちは6年生だとするとまだ分からなくて当然ということなのか。ただこの例と結婚している人たちの違いは「覚悟」ですよね。これから「結婚」というものがもたらす環境の変化や人間関係の構築などを背負う「覚悟」があるかどうかということ。単にビビってるという風に言われてしまえばそれまでかも知れませんが、それでは "なぜ嫌悪感を感じるか" という答えにはならないんです。こんな感じで堂堂巡りなんです。




朝、夫ニックが外出から家に戻ると妻エイミーが消えていた。警察に捜査を頼むも壊れた家具や小さな血痕、ニックの妻への関心の無さから妻殺しの疑惑は次第にニックにかけられる。
さて、エイミーの日記と、捜索状況が交互に展開されていくんですが、この二人最初からちょっと変なんです。
妻のエイミーは日記の語り口が乱暴だったり、図書館でヤッちゃう異常性だったり、記念日には二人の最高のセックスに相応しい上物のシーツを贈ったり、単なる恋愛の初期衝動という言葉では片付けられない不気味さがあるんですね。
一方、夫のニックは表面的な表情しかしない腑抜けた感じが引っかかる。大学講師でもあるニックは教え子である巨乳女子と愛人関係にあるのですが、いよいよそれが発覚するシーンでは「あちゃー」と顔を手で覆いたくなるような失態ぶりで超笑える。しかも「ヤったらすぐ帰るんだよ」と優しく呟くも朝まで一緒に寝てる始末。こいつが本当に奥さん殺したんじゃないの?」と思えてきてしまう。
しかし、映画の折り返し地点で全ての種明かしがされると映画の構造が一気に反転します。エイミーは実は生きていてニックを陥れる為に殺人現場を偽装し、失踪。男にとっての理想の女を演じていたということなんですが、これって女性だったら共感できるんですかねー・・・。なので図書館でヤッちゃう異常性だったり、記念日には二人の最高のセックスに相応しい上物のシーツを贈ったりってのはニックの理想に寄り添った行動だったんですね。「完璧なエイミー」という母が描いた絵本のモデルであり、そのせいで常に自我と闘いつつも「完璧」を演じてきた彼女は少しずつこじれていき、屈折していったんですね。ちなみにここの種明かしは一流の編集と音楽と演技と演出で10分前後のシークエンスなんですが、観客がこの上ない緊張感を持って事態の収拾に集中力を注ぐあの異様な空気感は凄いです。




この後、コテージかなんかで生活していたら隣人に金パクられて「ぐぬぉぉぉおおお!!(コレマジ)」と枕に顔を埋めるシーンや、行き先に困ったエイミーは元カレであるデジーと再会します。気に入らない男は徹底的に陥れる彼女はまたしても嘘を重ねていきますが、デジーに関してはついに殺害という手段を取る。 後に「キチガイ元カレに誘拐されていたの!」と泣きつけるように股間に赤ワインを塗りたくり監視カメラに向かって絶叫(このシーン自分が録画テープを隠滅するんだったら必要なくない?ちなみにスパイダーマンのように這って窓際までいくこのシーンは不快指数7億)→膣内をワインボトルで傷つけ、手首に拘束された痕をつけてレイプ被害を偽装→デジーとセックスし、デジーが絶頂に達する瞬間にのど元をカッターでぶった切る。→「はい、今日の仕事終わりー」と無表情でスタスタとその場を後にする。・・・これ笑えるんですが、エイミーの迷いのなさが気持ち悪くて気持ち悪くて・・・「早くこの映画終わらねえかな・・・と具合悪くなってしまいました。




さっきから笑える笑えるってお前充分楽しんでんじゃねえかと思うかも知れませんが、↑上の写真のベン・アフレックみたいに、口は笑っててもそりゃ目は死んでますよ。
ラスト、エイミーはデジー殺害時の血まみれの姿のままニックの元へ戻ってきます。そうです、「キチガイ元カレに誘拐されていたの!」とFBIに嘘をつき、世間ではめでたしムード。捜査を続けていたロンダ刑事も質問をはぐらかすエイミーに「このクソ女が!」と疑念を噛み殺しつつも、それ以降は既に捜査権はFBIに渡っていたので口出しはできずという歯痒さ。
エイミーがやりたい放題やっていたとき、もちろんニックも妹マーゴと弁護士のターナーと一悶着ありながらも、エイミーのサイコパス性質に気づき、有名番組に出演して誠実さを見せたりと奮闘していたんですが、そこはエイミーの方が上手。「猫を被るのはやめろ、君とは事態が収まったら離婚する!」と勢いづくも 「そんなことしたら私のファンが黙ってないわ。」その上、精子バンクに預けていたニックのそれを使った「妊娠」という最低の最終兵器を使う。これに憤慨したニックはエイミーを壁に叩き付け「なんでこんなことを!僕は君を愛していた。でも今はお互いを傷つけ、支配し合うだけじゃないか!」と言うと間髪入れずエイミーは「それが結婚よ」と一掃。
・・・もうね、スクリーンと自分との距離がどんどん離れてやがて暗闇に堕ちていくようなとてつもない絶望感に包まれて本当にめまいがしました。極端とは言い切れないその答えは僕が探していた「なぜ結婚に嫌悪感を抱くか」という問いに対して充分すぎるものでしたどこかでそういうものだと気づいていたのかもしれません。じゃないとここまでドハマりする答えもないと思います。理想の女性像を勝手に投影してそうあって欲しいと願う。また自分もそう演じながら接したり男なら誰しもそういう経験があるんじゃないでしょうか?
ニックは子供に対して罪悪感を感じ18年間エイミーと仲睦まじい夫婦を演じることを決意します。辛すぎる・・・。
そんなんだったら結婚なんてしたくないと思いましたが、それ以上に「それが 結婚」と言うなら「あーいいよ!それが結婚なんだったら何十年と演じ切ってやるよ!!上等じゃ!!(極端)」とある意味で覚悟が持てた気がします。まだまだ恐いですけどね。ゼクシィのCMとか僕に取っては欺瞞の塊です。





そんなこんなでこの映画、今年ベスト1でありワースト1でもあり僕の生涯ベスト級の作品になりました。
みなさん、ぜひ観に行ってください!一人で観に行くもよし!カップル、夫婦で観に行くもよし!(劇場内のカップル、夫婦はもの凄く生気の抜けた顔になって劇場を出て行きました。)一番は友人関係の男女が観に行くのが一番面白いんじゃないかなーと。
今回の演技でエイミー役のロザムンド・パイクは間違いなくオスカー狙えると思います。来年のアカデミー賞が楽しみです。


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