2013年5月28日火曜日

ドドメ色の少女の冒険『燃える仏像人間』


シネ・リーブル池袋にて鑑賞。あとあと知ったことだが、頭に「動く待ち合わせ場所」と書かれた手作りの被り物をしてる男性がいたのだが実は『ウルトラゾーン』の脚本の中沢健さんだったのだから後の祭り!関係者の人多いなーとは思ったがまさか中沢さんがいらっしゃってたとは!
と、まぁこの様子からも見て取れるようにこの『燃える仏像人間』に関しては完全ノーマークで前情報も入れない状態でした。たまたま5月公開予定の作品一覧を観てタイトルに惹かれてクリックしたら、こんな素敵な劇アニメーションが公開するとはっ!!といった具合です。
劇場に着くとなんと舞台挨拶とサイン会付きの文字が!「サ、サイン会…き、きき緊張やん?」と始めからサイン頂く気満々でした。
そして¥250のジンジャーエールを片手にいざ座席へ!
まず舞台挨拶。監督脚本の宇治茶さんが壇上に上がる。控えめで良い人そうな印象。退場のとき扉が開かずにおどおどし、場内を微笑みに包むというサービスまで。期待が膨らむ。


原題:燃える仏像人間
上映時間:80分

監督・脚本・作画・撮影・編集: 宇治茶
共同脚本: 中沢健
製作: 西村よしたか / 柴崎和則 / 伊藤毅彦
製作総指揮: 森田一人
出演:井口裕香、寺島農、原佐知子 etc.

ストーリー:京都で仏像が次々と盗まれる事件が発生。寺の娘で女子高生の紅子は実家の仏像が盗難に遭い、さらに両親を殺されてしまう。家族ぐるみの付き合いのある円汁の話によれば、犯人はシーダルダという盗賊集団の可能性があるという。そして、円汁の寺に引き取られた紅子は、円汁の秘密の部屋で両親と仏像が合体し溶け込んだような生命体と対面し……。



SF怪奇劇アニメーションとでも言うんでしょうか。面白かったですよ!
一度見たら忘れられないような奇怪でもありチャーミングでもあるキャラクターや世界観は漫☆画太郎風といいますか、楳図かずお風といいますか、黒坂圭太風といいますか。また『プレデター』、『エイリアン』のような生命体と機器を融合したようなキャラデザや管を多用したルックの部分は好きな方も多いのではでは?スライム上の液体を多様したゲロシーンも観てて微笑ましいんですよコレがまた。
ともかく絵力で一気に引き込むと言うのに尽きるんですが、見せ方が映画的でもあって興奮しました。色合いも濃厚で主人公の肌の色がドドメ色なのが印象強くて強くて!このまま実写にトレースしても見劣りしないほど。

あと「あなた達の無駄死にを無駄じゃなくしてみせるわ!」というセリフも良かった。「無駄にさせない!」ではなく「無駄じゃなくしてみせる!」のほうが "私が" という確固たる意志がビンビン来てかなりアガりました ええ。なんか上手く言えてない気がしますがとにかくアガったんです。ええ。

僕が一番グッと来たのは監督のキャラクターに対する愛情がヤバイ。
パンフレットを見てもらえれば分かるのですが、全キャラクター、ほんとに一瞬しかでてこないような脇役のキャラクターもしっかり解説されてるんですよ。バックボーンや劇内の登場シーンの前ではこんなことをやっていたなど。もうね、こういう誠実な作家魂を見ると心が震えるんですよね~。

 
しっかりサイン会にも参加し、「面白かったです!ありがとうございます!」と当たり障りのない感謝の意を伝えました。宇治茶監督 素朴な良い方でしたよ!今後の作品が楽しみです。


それにしても最近ノートPCの調子が絶不調なのでこの記事上げるのに再起動10回くらい起こしてるので、困ったもんです。もともとデスクトップ欲しかったので考える時期か・・・。

2013年5月16日木曜日

CINEASTE 3.0

先日5/8の水曜日、渋谷ヒカリエ 8/で行われたCINEASTE 3.0にて内藤瑛亮監督の新作『救済』と大畑創監督の新作『Trick or Treat』を観て参りました。

入場料、鑑賞料全てフリー!しかもドリンクとして缶ジュース1本付き!(ちなみに僕はジンジャーエールをチョイス)。至れり尽くせり!凄くいい企画!「これでお客さんいなかったら監督やめようと思った」と大畑監督。個人的にはもっといると思ってたんですけどねー。ざっと30人くらいでした。
映画の感想の前に渋谷ヒカリエのオサレ度の高さが気になりましたよ。いる人来る人帰る人みんなオシャレ!男はかっこいいし女の子はかわいいし、普通のパーカーとチノパンの僕としてはもう嫌になりますね!
 
 
始めは内藤監督の『救済』から上映。
『救済』は水本夏絵さんのソロプロジェクト 転校生の原案を元にした23分間の短編映画。もともと音楽×映画を目指したイベント企画(ちなみに企画者は入江悠監督)MOOSIC LABがキッカケらしく、内藤監督は始めは断ろうと思ってたとのこと。
ざっくりとストーリー紹介↓
同級生にいじめられる日々を送る女の子。ある日CDショップで万引きをさせられてる最中、ひょんなことから拳銃を手に入れてしまう。まさに「救済」してくれる相棒を手に入れた女の子は日に日にエスカレートしていくいじめっ子達をぶっ殺しに向かうが…。

まずこのいじめっ子があの『先生を流産させる会』の主演の小林香織ちゃんですよね。出てくるだけであの顔の圧力というか、ハビエル・ヴァルデムにも負けてないと思いますよ? とにかくいい感じに成長してくれてて嬉しくなりましたね。
で、今回の主演の中村ゆりかちゃんもまた美形なんだ。美形なんだけど、この世に生を受けてないあの死んだオーラも最高。拳銃が川にふっ飛んで必死に探すシーンはなんだか泣きそうになりましたよ。なんせ拳銃は彼女にとってこの地獄みたいな世界から脱する唯一の手段であり希望だったわけですからね。うん、凄くいいシーンだったな。
このシーンは原案の転校生曰く、音楽は必ずしも希望になり得るものじゃないという辛い現実を表してるもので、拳銃は音楽のメタファーなんだそうな。だからあそこで彼女は撃ち殺すことができずに拳銃を無くしてしまう。撃ち殺してしまったら方法はどうあれ、彼女は希望を手にしてしまうから。
うーむ、内藤監督のトークを聞かなかったらこの深い部分までは全く気付きませんでしたw
 

大畑創監督の新作『Trick or Treat』は映画情報番組チャンネルNECOのメインMC三人を据えた短編を撮ろうということで、ヒガリノ、フォンチー、黒田有彩を中心に描かれる復讐劇。
ざっくりとストーリーを↓
大学生の承子と結は次期首相候補の増川史郎を殺害しようと企て、その娘 美菜に近づく…。
はっきり言って個人的には『へんげ』より好きかもしれない作品でした。話の推進力が衰えない上に日数を遡って展開していくのって個人的に凄いアガる手法なんですよね。で、ほんとにキャストが魅力的でして。主演のヒガリノちゃんが梶芽衣子にそっくりなんですよ!雰囲気も何もかも狙ってるのかな?と思うほど。エンディングテーマは恨み節でも良かったかもしれない。合わないか!

恨み節貼っておきますね。
 
政治的メッセージでもある映画なのかなーと思いつつ見てると、いざ!ってときに急展開が待っていて良い裏切り行為でしたねあそこは。そこからの主人公承子の言動が最後の最後で信用できなくなる不穏なラストも好きでして。「コイツ何考えてるか分からないぞ?」とそれまで味わってきたワクワクが良い意味で裏切られて一気に遠い立ち位置のキャラクターになるんですよ。でも不気味な魅力があってそこに結構グッときました。
両方とも若手女優がすげぇ良くて、それだけで満足しました。最高!
 
ではこの辺で。

 

2013年5月7日火曜日

白目じゃなかった リメイク版『死霊のはらわた』

 


『死霊のはらわた』(字幕)

原題:EVIL DEAD
2013/アメリカ/91分
監督:フェデ・アルバレス
脚本:フェデ・アルバレス、ロド・サヤゲス
製作:サム・ライミ、ブルース・キャンベル、ロブ・タパート
出演:ジェーン・レヴィ、シャイロー・フェルナンデス、ジェシカ・ルーカス 他

ストーリー:うっそうとした山奥にたたずむ小屋を訪れた、ミア(ジェーン・レヴィ)をはじめとする5人の若者。小屋で「死者の書」という不気味な書物を見つけた彼らは、はからずも邪悪な死霊をよみがえらせてしまう。解き放たれた死霊はミアにとりつき、若者たちに襲い掛かる。おぞましい姿に変ぼうしたミアと戦いながら山から脱出しようとする若者たちだが、死霊の力によって行く手を阻まれてしまう。助けを呼ぶこともできぬまま、一人、また一人と、彼らは死霊にとりつかれ……。


109シネマズ湘南にて観てまいりました。
こないだ劇場で予告を観て「気合入ってんなー」とボーっと思ってたらもう公開へ。
劇場内ではカップルや中年夫婦や親子で観に来ている客が多く、こちらとしては僕みたいなロンリーウルフが多くいることを期待したのに残念な限り・・・。

『死霊のはらわた』と言えば言わずもがなスプラッタームービーの大傑作だが、果たしてここまでの作品をリメイクなんてできるのだろうか?結果、僕はリメイクできていないと思いました。
と、言うのも全体的にゴアにゴアを重ねたり、展開がお約束の範疇だったりと、意欲は認めたいけど全く別の作品を観ているようだったからなんですよ。それは監督の意図でもあるんですが(後ほど書きます)。

僕が気になった点が大きく二つありまして、まず一つ目。死霊の所在なし感がまるでない。オリジナルを観た方ならご存知のはずですが、死霊は死霊そのものの姿を見せないじゃないですか?現れたとしても人体を拝借するだったり、死霊目線のアングルになるだけだったりとそのもの実態があるのかないのか分からない所在なしの存在なんですよ。
それなのにですよ?リメイク版では主人公ミアが森に襲われるシーンで、謎の女がいるではありませんか。「ん?誰これ?」と思って観ているといきなり口から黒い木のツルみたいな物体をオロロロロロロと吐き出し、そのままミアのアソコにGO!!(これはこれで好きなんですが)って・・・待て待て待て待て。あれが死霊なの!?と。リメイクとは言え僕らが恐怖してきた阿鼻叫喚のあの『死霊のはらわた』の死霊はあの女なの!?・・・・・・もう僕は何も信じられなくなりましてねぇ(遠い目)。
その上、死霊の目が赤いカラコンと来た。全然怖くない。全然狂ってない。人間の目って瞳がある時点で意思を感じてしまうと僕は思っていて、オリジナル版の死霊は全員白目で狂いに狂っていて次に何をしでかすか、どこから出てくるか、分からないから今見ても怖いんじゃないですか?
監督のフェデ・アルバレスは「オリジナルのアイデンティティーをベースとして全く新しい映画を作る気でいた」と語っていますが、だったら・・・だったら白目にしようよと思いましたね。そこはアイデンティティーの一つなのでは?と思えて仕方がなかった。白目にすれば所在なし感も増すと思うんだけどなー。


二つ目、なんかゾンビみたい。
なんか死霊の登場の仕方がゾンビみたいなのが気になった。オリジナル版の死霊たちはとにかくエキセントリックな動きと登場仕方で僕達を楽しませてくれたけど、リメイク版は最初はいなかったのにカメラがパンすると後ろに立ってぼーっとしてたり、ノロノロ動きながら釘打ち機をピシュンピシュン撃ってきたり「んーーーなんか死霊じゃなくてゾンビみたいだなー」と観てて眉をひそめてしまった。

好きなところも結構あったり。
冒頭、森が天地逆さまになっててるのは『デビル』っぽくて期待を煽るし、肉きりチェーンソーで腕を切り落としたと思ったら筋一つで繋がっててブチっと落っこちたり!
あとナタを手に取ろうとしたところで「えーナタなのー?」と思った瞬間にその上の棚にチェーンソーがあったりだとか!
血ゲロぶっかけるシーンは『スペル』っぽいなーと思ったり、血の雨の中で死霊ぶった切りシーンとかね。しかもあのミア役の人耳に血の雨が入って感染症になっちゃったとか。
ミアが水面を移動して迫り来るシーンはそれなりだけど、お約束っちゃお約束。ビオランテのそれには及ばず(比べていいものか・・・)

 
『ゴジラVSビオランテ』の予告編貼っておきますね。ビオランテの移動シーンも入ってます。



『ゾンビ』、『13日の金曜日』、『悪魔のいけにえ』など数多くの名作ホラーがリメイクされきてましたが、今作は成功してると思います。ただ『死霊のはらわた』のリメイクではなく、名作ホラーのリメイクとしてです。
現代の技術やスタッフを使って焼きなおすだけではなく、あくまでオリジナル版のストーリーやアイデンティティーをベースとして全く別のものをCGなしで、笑ってしまうほどのゴアで世に出してくれた熱意は嬉しい限りです。


今作で一番好きなシーン。あーだこーだ言っても忘れられないシーンがあるというだけでぐっじょぶです。
血の量ではオリジナル版には負けてないのでオススメです。