2012年12月28日金曜日

007 スカイフォール


自分は今凄いものを見ている

自分は今凄い経験をしている と、心底感動したのが007シリーズ第23作目にあたる『007 スカイフォール』だ。


あらすじ:MI6のエージェントのジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は、NATOの諜報(ちょうほう)部員の情報が記録されているハードドライブを強奪した敵のアジトを特定し、トルコのイスタンブールに降り立つ。その組織をあと少しのところまで追い詰めるも、同僚のロンソンが傷を負ってしまう。上司のM(ジュディ・デンチ)からは、敵の追跡を最優先にとの指令が入り、後から駆け付けたアシスタントエージェントのイヴ(ナオミ・ハリス)と共に、敵を追跡するボンドだったが……。


IMAXにて二回観たんですけど、これ程自分の感性に訴えかけてくる映像美を搭載した映画を観たのは初めてでした。ニコラス・ウィンディング・レフン監督の『ドライヴ』や、紀里谷監督の『CASSHERN』にもそういった美しさはあったのですが、これは郡を抜いてました。
そして、僕は恥ずかしながら007シリーズは今作を観るまでほぼ触れたことがありませんでした。強いて言うなら金曜ロードショーで放送していた過去シリーズを流し見してたくらいです。
そんな僕がなぜ今作を観るに至ったかと言うと3つ理由がありまして。

まず一つ目が、公開当時ラジオから流れてきたADELEの主題歌『SKYFALL』がすっごく良かったんです。もう悩殺されましてしばらく脳内ヘビロテしていました。貼っておきますね↓



二つ目、予告編を観たときに、今までにあった爆破シーン連発のピアース・ブロスナンの007シリーズのイメージとは違い、派手なシーンはあるものの洗練されているスマートさを感じたということ。

三つ目はタマフルシネマハスラーランキングで1位に輝いたこと。
シネマハスラーであたったから観に行くってことはあまりなかっただけに変な抵抗がありましたが、上記の三つが重なり観に行くことに決めました。

いやはや今年ベスト級の作品でした。

作品の内容もさることながら、ボンドが母親的立ち位置のMのもとから親離れし成長するという機軸の上に様々な要素が観てて気持ちがいいんですよ。二回目を観に行く前に『ゴールドフィンガー』、『カジノ・ロワイヤル』、『慰めの報酬』を観ておいてよかった。過去シリーズオマージュや小ネタも楽しめました。(以下ネタバレ満載)

特にOPタイトルはもう号泣!「すっごい!!すっごいものを見てる!今の俺すっごいものを見てる~~!!!!」
次点で好きな『ゴールドフィンガー』のOPタイトル貼っておきます↓



そしてハビエル・バルデムの最高の悪役っぷり!ボンドの影として、もう一人のボンドとして超アクの強い兵シルヴァとしてボンドをMをMI6を翻弄します。顔圧が半端ないのでIMAXスクリーンいっぱいに広がるバルデムフェイスはもうお腹いっぱいでした。


『カジノ・ロワイヤル』のマッツ・ミケルセン演じるル・シッフル。敗北の瞬間に流した血の涙は格別。

 
 『慰めの報酬』のマチュー・アマルリック演じるドミニク・グリーン。気持ち悪いが何か物足りない。
 
 
 ダニエル・クレイグ版007の歴代悪役と並べるとやっぱりバルデムが一番クセ強い!
 

幼少期を過ごした生家SKYFALLでの闘い。幼いボンドは地下通路に二日間閉じこもり、出てきたときには大人になっていたと管理人キンケイドの言葉が、後ほどやってくる脱出シークエンスで絶大な意味を成す序章の言葉なんです。そこからボンドが脱出するとき「こんな家!」と言って切なくも決意を感じるセリフを放ち、シルヴァの危機が迫るMのもとに急行しますが、深手を負ったMは命を引き取ります。しかしそこに至るまで幾度となく死を体験してきたボンドは自分のアイデンティティを超えた成長を見せます。地下通路から出てきたボンドは大人になったのです。
そしてMの後任のマロリー(M)と会話を交わすラスト。「仕事だボンド君」とマロリーは極秘書物をボンドに渡します。ボンドは「My pleasure(喜んで)」と最後に残ったものは結局007である自分だ、と言わんばかりの微笑みを浮かべます。
そして締めのガンバレルシークエンス!完璧!!


ちなみにMが最後に残した「私は一つ正しかった」という言葉の真意。明確には語られませんが、ボンドの身体テストの結果を振り切ってボンドを残したことだと思うのです。しかしその他の自分の行動を咎めながら逝ったなかなか切ないシーンでした。


そして町山智弘氏がSKYFALLの意味をラテン語で 「天が落ちようとも(この世が終ろうとも)正義を成就させよ」と説明していました。これはMによる審問会でのMI6と007シリーズに向けた高らかな存在意義宣言にも通じます。もうほんとに良くできた作品です。



他にもボンドとシルヴァをネズミに例えたやりとりや、舞台毎に変わる画面全体の照明や色合い、細かいSEや素晴らしい音楽についても記述したいことが多すぎます。こんなに熱のこもる作品はほんとに久しぶり。
結果として、007シリーズ初見の僕が観ても最高に面白いと感じた一回目、そしてシリーズを抑えて迎えたらどんなに面白いんだと思い前述の三作を抑えて臨んだ二回目、どちらも底なしの面白さと芸術性を搭載していました。映画自体の穴も無くはないんでしょうけど、そんなのどうだってよくなるほどの素晴らしさ!!オススメです!!