3月9日映芸シネマテークvol.12 『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』、『西みがき』、『玄関の女』
3月10日『へんげ』、『大拳銃』
こんな感じで、最近日本の自主映画を連続的に観てきました。
横の繋がりはもちろん重要だけど、もっといろんな媒体を通して上手いことプロモーションしたらいいのになぁと思うところ・・・自分がこう思う前にスタッフ、キャストの人たちは歯がゆい思いになっているんですけどね。映画って予告編みたいに順序立ててプロモーションの形を取らないと難しいのかなーとか・・・若輩者の戯言なんですけどね。
まあシネマテークでの大工原正樹監督と井川耕一郎監督のトークを聞いて改めて思ったわけです。本当に足を運ぶことが重要なんですね~ うーむ。
『へんげ』
ストーリー:とある静かな住宅地で暮らしている夫婦。そんな二人は、夫が体をのけぞり恐ろしい叫び声を上げるほどの発作に、たびたび悩まされていた。無数の虫に意識を乗っ取られるような症状を止めようと検査をするが、現代医学の力をもってしても原因はわからず、回復するきざしもない。そんなある夜、夫の肉体がこれまでにないほど不気味な変態を遂げ始める。そして、思いもよらなかった恐怖が夫婦に降り掛かっていく。(シネマトゥディから抜粋)
今のところ今年のベスト1です。今のところ。
日本映画界に鉄槌を下す大破壊エンターテイメントと言っても過言ではないと思いますね。
前半は医療サスペンスもの、中盤以降は猟奇ホラーとウルトラQ要素を含めた一種のボディスナッチものに展開…というよりまさしく "へんげ" していく。
そして「上手い!!」と唸ざるを得ないのが主要キャスト三人の名演技ですよね。
森田亜紀さんによる冒頭のナタリー・ポートマン顔負けのあんなシーンや、中盤にかけて歪んだ愛情を開花させていく様。
そして相澤一成さんの丹精な顔立ち(大畑監督の言葉を借りると"フィクショナルな顔")から滲み出る狂気と穏やかさの抑揚が生理的恐怖を生んでる。怖い!気持ち悪い!
精神科医役の信國輝彦さんの注射器のキャップを外すシーンは鳥肌もの。
忘れてはいけないのが祈祷師役の柳有美さん。「祓いたまえ清めたまえととうかみみたみ!!」
鼓舞するような音楽そのものも良かったし、使い方も本当に素晴らしい。ラストで流れる音楽が促す「やっちまえ感」は素晴らしい映画体験だった。
ああいうような非現実的で奇怪な症状に見舞われても現代社会では医学に頼るしかないし、究極 祈祷師を呼ぶといったようなスピリチュアル的処置しかできない。
フィクションを撮ってはいるけどそういったキッチリとしたリアルさを映画内に吹き込んでる作り手の精神性も評価すべきですよね。あのお経も本物らしいですからね。
蛇足だが『へんげ』はバウスシアターの爆音映画祭で上映すべきですね。
そして公開初日にもう一度観に行きました。
順番は『大拳銃』が先。『へんげ』の余韻を楽しんでもらいたいと監督の意向らしいです。
上映前に舞台挨拶があり、そこでまさかの監督による『へんげ』のネタバレがあって会場爆笑でした。前の回の舞台挨拶が上映後だったので、多分そのノリで言っちゃったんでしょうw
『大拳銃』はもちろん初見だったけど前者に負けず劣らずで非常に面白い。確かに自主制作故の粗は目立つものの、それを気にさせないほどよくできてる。
いきなりくるスプラッターシーンもビックリした!
ていうかですね、デカい拳銃といいチャージ音といい特撮ものといい、大畑監督は男が追い求めるものを分かってるとしか言いようがない。
両作とも自我を失う話と同時に、監督が言っていた「人間が人間を人間扱いしない瞬間を描いてこそ映画は面白くなる。」それを描いた話でもあって、やっぱりそれは観てて最高にアガるし、映画自体の温度も最高潮に達する瞬間だなとしみじみ思うわけでございました。何より筋が通ってる映画は観てて気持ちいいものだなと。
前後しますが、この前日には人形町三日月座にて大工原監督『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』、井川監督『西みがき』、『玄関の女』も観ました。
『姉ちゃん~』はよくできていて面白かった!
ちょっと脚本にわざとらしい部分があったんですが、世界観に良い味を加えてるんですよね。
"アイツ"に翻弄されていく姉弟の不気味でもあり物悲しくもある何ともいえない不思議な物語。でも最後は感動しました。
演出も凄く凝っていて、バックミラーを使った姉弟と表情や、セーラー服に還るゲーセンのシーン、旅館で交わされる会話など、とにかく不思議な空間に妙に切れ味のあるリアルさを放り込んでくるんですよ。
ロケ地の木更津も「本当にこんな感じなの!?」と疑いたくなるほどの空虚感。この映画に合いすぎてて怖いですね。
個人的に井川監督作品は楽しむことができず、かなり睡魔に襲われましたね。間というか、語り口の遅さがどうも苦手で、『西みがき』は50分の作品なのに120分にも感じました。「主演の本間幸子さんの記録」とも井川監督が言ってたように、彼女のやわらかい雰囲気が全面に押し出されていて相当井川監督のお気に入りなんだなぁ、と。
『玄関の女』は13日の金曜日がテーマのオムニバス作品の一つで、その中でも井川監督の友人のフィルムキッズ社長 千葉好二さんと編集者 小寺学さんへ向けた追悼映画でもある。
5分の作品だが、成長した本間幸子さんが不気味に演じていて観てて気持ちよかった。記録と言うには相応しい怪作。井川監督曰く「泥酔後に観た夢が元だから深く考えないで観て欲しい。」これに対して大工原監督は「いや、これって井川さん死体役やってますよね?これ自分自身への擬似追悼映画なんじゃない?」この考え方はさすがだなぁと聞き入ってしまいした(自分の感性の未熟さが露呈してしまいましたねw)。
上映後のトークもそんな感じで裏話がたくさん聞けて楽しかったです。
映画美学校を軸にした自主作品が多かったので、次回は別の学校が協力してる自主作品も観たいです。
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