2013年4月15日月曜日
Dir en grey 『THE UNRAVELING』が素晴らしい。
Dir en greyの新譜『THE UNRAVELING』が素晴らしい。
02年発表の『six Ugly』以来、実に11年ぶりのミニアルバム。しかも新曲1つを除いて全てが再構築楽曲といった革新的な内容。
彼らが再構築と謳って初めに手がけたのは『DOZING GREEN』収録の『HYDRA-666-』。まあ正確にはそれこそ『six Ugly』収録の『秒「」深』と『children』であるはずなんだけど。今の彼らのアプローチでは『HYDRA-666-』であると思われる。そこから新作を出すたびに何らかの形で再構築楽曲を増やしていってはいたがここに来てミニアルバムとは本当に読めないバンドだな と。
そもそも再構築ってなんぞ。再録と違って曲そのものの構成や詩を作り直し、でも原曲のエッセンスを残しつつ別の楽曲に昇華させるといったところかな と。楽曲によってその振り幅は異なるが、砕けた表現をすると、要は「今の俺らであのときの曲やったらどうなるべかね!?」ってこと。
この再構築の歴史を見ると結成初期から『THE FINAL』までの楽曲らが選ばれている。
序章となったのは『秒「」深』(原曲は97年発表の『MISSA』収録)と『children』(原曲は00年発表の『太陽の碧』のカップリング)
第一弾は『HYDRA-666-』(原曲は00年発表の『MACABRE』個人的には一番の傑作アルバム)
666の表記はオーメンみたいに三角形の中に6が3つ収まるような凝ったもの。重苦しい緩急により原曲とは全く異なるアプローチが取られている。
第二弾は『undecided』(原曲は02年発表の『鬼葬』収録)
原曲よりストリングスが強調されサウンド的にかなり洗練されている。
第三弾は『残』(原曲は99年発表3枚同時シングルリリースの一つ『残-ZAN-』)
ファンの間ではこの選曲は大変嬉しいものだった。今の彼らが『残-ZAN-』をやったら!?その憶測は散々飛び交っていた中での再構築。出来は非常に高評価でライブでは定番になるほど完成されている。90年代ヴィジュアルシーンのタイトル表記の中で流行った、漢字1~2文字の後ろにローマ字で読み方を表記する手法。再構築するに当たってその表記が削られているのも期待が高まる要因の一つでもあった。
第四弾は『OBSCURE』(原曲は03年発表の『VULGAR』収録)
こちらもライブでは定番の楽曲だが、評価は今一つで原曲にあったようなメロディアスな部分が削られており、且つテンポを早めた影響か重苦しい和と罪深い背徳感とグロを上手く掛け合わせた世界観が抑えめになっている。
第五弾は『蜜と唾』(原曲は99年発表の『GAUZE』収録)
本来の表記は「つみとばつ」と読ませる為、反転している。『DIFFERENT SENSE』に『罪と規制』というタイトルで収録されたがこちらは歌詞が規制されているもの。後にライブ会場限定で1曲入りのシングルが発売されている。
第六弾は『羅刹国』(原曲は00年発表の『MACABRE』)
さらに無駄な部分をそぎ落として重くソリッドな仕上がりに!と言ってもそこまで目だった改変はない。
第七弾は『霧と繭』(原曲は97年発表の『MISSA』収録)
『HYDRA-666-』並みの変貌っぷりである。全体に言えることだが突如聞きなれたギターリフやメロディ、歌詞が耳に飛び込むまでは完全に新曲を聞いている感覚である。
そして今回の『THE UNRAVELING』
『業』、『かすみ』、『鴉』、『Bottom of the death valley』、『Unknown.Despair.Lost』、『THE FINAL』、『MACABRE』である。ファンなら誰でも驚いたであろうあの『業』が選ばれている。インディーズ時代のビデオクリップ集にしか収録されていない曲で僕もYouTubeで数回しか聴いたことがなかったので正直忘れてしまっていたほど初期の楽曲である。原曲より遥かに完成度が高く、何より初期の頃にあったようなクセのあるメロディが生きていて現在の彼らに受け入れられているということが嬉しい。ちなみに「カルマ」と読みます。
『かすみ』に関しては大きな改変はないが、京の歌い癖を極力抑えていて非常に聴きやすくなっている。個人的には『かすみ』が持つ世界観を頭の中で情景を思い浮かべたときに空まで明確にイメージできたことが大きい部分だと感じた。まああくまで個人の想像力の領域の話だけど。
『鴉』。これは上位に入るほど好きな楽曲だっただけに聴くのが怖くて最後に聴きました。問題はラスト。溜まっていた悪しき性欲が溢れ出るが如き流れるような怒涛の大サビ。変わるならあそこだろうと思っていたが、さすがはDir en grey新たな『鴉』の像を作り出してくれた。
『Unknown.Despair.Lost』も『業』と同様、「バラバラにしてみようか」「火をつけて混ざり合う」等のメロディがかなり残っていて嬉しかったな。最後の転調とか気持ちいいし。「inside ヒューマンボイス」とか無くなるかと思ったんだよね。ちょっとここまで残してくれるんだったらぜひ『-I'll-』の再構築を!!!
『THE FINAL』今回、メロディアスな曲はほんとに歌い癖を極力抑えてるんですよね。あとギターソロとかも増えててメンバーのやりたいことが見え隠れしてて面白い。それにしても名曲だわコレは。
『MACABRE』完全生産限定版にしか収録されてない問題児。正直コレは再構築する必要なかったのではと!原曲からして既に完成されてるし・・・実際メンバーもそう言ってるしね。でもこれがまた良いんですわ。既に完成しているものを存在しないもう一つ上の完成領域に持っていくとは本当に最高なバンドです。ぜひライブで聴きたい。
Dir en greyはライブで過去の楽曲をやることはさほど珍しくはない。その都度、現行の世界観とスキルを持って披露してくれる(『腐海』なんか良い例)。再構築楽曲はいわば各楽曲達の一つの完成形である。故に再構築された楽曲は原曲のアレンジでは二度と披露されない。そこに再構築楽曲を楽しめる要素と期待と不安が入り混じるDir en greyというバンドが歩んできた歴史に比例した一つのコンテンツなのかもしれない。
次回はどの楽曲なのか期待と不安がスパイラルしてますが『脈』、『THE 3D EMPIRE』等、あと1~2年もすれば『Withering to death.』時代にも手を伸ばしてくるだろうし、まあ今はこの『THE UNRAVELING』を聴き倒すのが先決ですかね。
あ、新曲の『Unraveling』もかなり新しいアプローチで面白い楽曲なのでほんとに全てオススメよ!
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